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住吉の松が根洗ふ波の音を
梢にかくる沖つ潮風

歌の意味
住吉の松の根を洗う波の音を、梢の上まで掛けて響かせる、沖から吹く潮風であることよ。
鑑賞
雑歌 1054

詞書「俊恵、天王寺に籠もりて、人々具して住吉に参りて歌よみけるに具して」
 俊恵が天王寺に籠もっていた折、人々を連れて住吉社に参詣し歌を詠んだ際に、西行も同行して詠んだ一首である。住吉の松の根もとを洗う波の音を、沖から吹く潮風が梢にまで運び上げている、と詠む。
 根もとの波音と梢を鳴らす松風とを、潮風が一つにつないでいる情景であり、松風の音を波の音に聞きなす和歌の伝統を踏まえている。住吉は松と波とで名高い歌枕であり、住吉明神は和歌の神としても崇められていた。俊恵は歌林苑を主宰した歌人で、西行と親交があった。

 初句「住吉の」は、摂津の歌枕住吉で、住吉社の松原を指す。
 二句「松が根洗ふ」は、松の根もとを波が洗う、の意である。
 三句「波の音を」は、その打ち寄せる波の音を、の意で、四句の「かくる」の目的語となる。
 四句「梢にかくる」は、梢に掛けて響かせる、の意で、根もとの波音が梢の松風となって聞こえるさまを表す。
 結句「沖つ潮風」の「つ」は「の」の意の格助詞で、沖から吹いてくる潮風を体言止めで示している。

まつがね:松の根
おきつしほかぜ:沖から吹いてくる潮風
作者
西行
出典
山家集
前の歌
波近き磯の松が根枕にて うら悲しきは今宵のみかは
次の歌
隔て来しその年月もあるものを 名残多かる峰の秋霧