霞めども年のうちはとわかね間に
春を告ぐなる山川の水
- 歌の意味
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霞んではいるけれども、まだ年のうちだからと春だとも分かちかねているうちに、春を告げているらしい山川の水の音であることよ。
- 鑑賞
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雑歌 1059
詞書「山籠もりして侍りけるに、年をこめて春になりぬと聞きけるからに、霞みわたりて、山川の音日頃にも似ず聞こえければ」
山に籠もっていた折、年内に立春を迎えたと聞いたとたん、一面に霞がかかり、山川の水音もふだんとは違って聞こえてきたので詠んだ一首である。霞は立っているが、まだ年内だからと春とも思い定めかねているうちに、山川の水が春の訪れを告げている、と詠む。
年内立春という暦の上の春を、人の心はまだ受け止めきれないのに、自然はいち早く春を知らせている、という対比が眼目である。目に見える霞と耳に聞こえる水音とで、山中の春の兆しを捉えている。
初句「霞めども」の「ども」は逆接の接続助詞で、霞んではいるけれども、の意である。
二句「年のうちはと」は、まだ年内であるからと、の意で、年内立春の戸惑いを示す。
三句「わかね間に」は、本文、読み仮名の行ともに「わかねまに」とあり、「わかぬ間に」の意に解する。春だとも冬だとも区別できずにいるうちに、の意である。
四句「春を告ぐなる」の「なる」は伝聞推定の助動詞で、音によって春を告げているらしい、と聞いて判断する意を表す。
結句「山川の水」は体言止めで、春の兆しを告げる山中の流れを余韻として残している。
わく:区別する、判別する
としのうち:年内、年が改まる前
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
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分けて行く山路の雪は深くとも とくたちかへれ年にたぐへて
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春としもなほ思はれぬ心かな 雨ふる年の心地のみして