なにとなく雪になりぬと聞く日より
心にかかるみ吉野の山
- 歌の意味
-
なんとなく、雪になったと聞くその日から、心にかかってならない吉野の山であることよ。
- 鑑賞
-
雑歌 1062
詞書「春立つ日よみける」
立春の日に詠んだ一首である。なんとなく、吉野は雪になったと聞く日から、吉野の山のことが心にかかって離れない、と詠む。立春の日に、まだ雪の残る吉野を思いやりながら、やがて咲く桜を待ちわびる心がにじんでいる。
吉野の桜をこよなく愛した西行らしい一首である。この歌は二句を「春になりぬと」とする形でも広く知られ、その形では立春の日から吉野の花を思う歌となる。本文はここでは「雪になりぬと」とあり、読み仮名の行も同じであるので、本文に従って訳した。
初句「なにとなく」は、なんということもなく、わけもなく、の意で、理屈を超えて心が引かれるさまを表す。
二句「雪になりぬと」の「ぬ」は完了の助動詞で、雪になったと、の意である。
三句「聞く日より」は、そう聞いたその日から、の意である。
四句「心にかかる」は、気にかかる、心から離れない、の意である。
結句「み吉野の山」の「み」は美称の接頭語で、体言止めで吉野の山を余韻として残している。
みよしの:吉野の美称
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
年ははや月並かけて越えにけり むべ摘みはべし柴の若立ち
- 次の歌
-
いつしかも初春雨ぞ降りにける 野辺の若菜も生ひやしねらん