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月見れば風に桜の枝なえて
花よと告ぐる心地こそすれ

歌の意味
月を見ていると、風に桜の枝がしなって、もうすぐ花だよと告げているような心地がすることだ。
鑑賞
雑歌 1069

詞書「春の月明かかりけるに、花まだしき桜の枝を、風の揺るがしけるを見て」
 春の月が明るい夜、まだ花の咲かない桜の枝を風が揺らしているのを見て詠んだ一首である。月を眺めていると、桜の枝が風にしなって揺れ、まるで花の季節が来るよと告げているように感じられる、と詠む。
 花のまだない桜の枝の揺れに、やがて来る花の予告を見て取っている。桜を愛した西行の、花を待ちわびる心が月夜の情景に託されている。

 初句「月見れば」は、月を見ると、の意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。
 二句「風に桜の」は、風によって桜の、の意である。
 三句「枝なえて」は、枝がしなって、の意で、風にたわむ枝のさまを表す。
 四句「花よと告ぐる」は、花だよと告げる、の意で、枝を擬人化している。
 結句「心地こそすれ」の「こそ」は強意の係助詞で、已然形「すれ」で結ぶ係り結びとなる。

なゆ:しなう、たわむ
まだし:まだその時期でない、未熟である
作者
西行
出典
山家集
前の歌
思ひ果てて古巣に帰る鶯は 旅のねぐらや住み憂かりつる
次の歌
花を見し昔の心あらためて 吉野の里に住まんとぞ思ふ