思ひつつ花のくだもの摘みてけり
吉野の人のみやたてにして
- 歌の意味
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心を込めながら、「花」という果物を摘んだことだ。吉野に住む人、みやたてへの贈り物として。
- 鑑賞
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雑歌 1071
詞書「みやたてと申しける端者の、年高くなりて、様変へなどして、ゆかりにつきて、吉野に住み侍りけり、思ひかけぬやうなれども、供養を述べん料にとて、くだ物を遣はしたりけるに、花と申すものの侍りけるを見て遣はしける」
みやたてという召使いの女性が、年老いて尼姿となり、縁を頼って吉野に住んでいた。思いがけないことではあったが、供養に用いるようにと果物を贈ったところ、その中に「花」という名の果物があったのを見て詠み送った一首である。心を込めながら、花という果物を、吉野に住むみやたてのために摘んだことだ、と詠む。
花の名所吉野に住む人へ「花」を贈るという取り合わせの妙に興じた歌である。かつての召使いが出家して吉野に住むことを思いやる、西行の温かなまなざしが感じられる。次の第千七十二首のみやたての返歌と一組の贈答をなす。
初句「思ひつつ」は、心を込めながら、あなたを思いながら、の意である。
二句「花のくだもの」は、詞書にある「花」という名の果物を指し、吉野の花を響かせている。
三句「摘みてけり」の「てけり」は完了と過去で、摘んだことだ、の意を表し、三句切れとなる。
四句「吉野の人の」は、吉野に住む人、すなわちみやたてを指す。
結句「みやたてにして」の「みやたて」は、詞書にある女性の名で、その人への贈り物として、の意を表す。
はしたもの:召使いの女性
さまかふ:姿を変える、出家する
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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花を見し昔の心あらためて 吉野の里に住まんとぞ思ふ
- 次の歌
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志深く運べるみやたてを 悟りひらけん春にたぐへよ