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紅葉見し高野の峰の花盛り
頼めぬ人の待たるるやなに

歌の意味
ともに紅葉を見た高野の峰が、今は花盛りである。来ると約束してもいない人がつい待たれるのは、なぜなのだろう。
鑑賞
雑歌 1074

詞書「寂然、紅葉の盛りに高野に参りて出でにけり、またの年の花の折に申し遣はしける」
 寂然が紅葉の盛りに高野山を訪れて帰っていったが、翌年の花の季節に西行が寂然に送った歌である。去年あなたと紅葉を見た高野の峰は今花盛りだ、来ると約束したわけでもないあなたが、なぜかしきりに待たれる、と友を慕っている。
 秋の紅葉と春の花とを対比し、ともに過ごした季節の記憶が、次の季節にも友を待たせることを詠んでいる。次の第千七十五首の寂然の返歌と一組の贈答となっている。

 初句「紅葉見し」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、去年の秋にともに紅葉を見た、の意である。
 二句「高野の峰の」は、高野山の峰の、の意である。
 三句「花盛り」は、今は春の花盛りである、の意で、初句の紅葉と対比され、三句切れとなる。
 四句「頼めぬ人の」の「頼む」は下二段活用で、あてにさせる、約束する意、「ぬ」は打消で、来ると約束していない人、の意である。
 結句「待たるるやなに」の「るる」は自発の助動詞で、「なに」は、なぜ、どうして、の意である。自然と待たれるのはなぜか、と自問している。

たのむ:下二段活用で、あてにさせる、約束する
またる:自然と待たれる
作者
西行
出典
山家集
前の歌
吹き乱る風になびくと見るほどに 春を結べる青柳の糸
次の歌
共に見し峰の紅葉のかひなれや 花の折にも思ひ出でける