谷深くすむかと思ひて訪はぬ間に
恨みをむすぶ菊の下水
- 歌の意味
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あなたがまだ谷深く住んでいるのかと思って訪ねずにいるうちに、菊の下水を掬うように、恨みを結ばせてしまったことだ。
- 鑑賞
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雑歌 1080
詞書「返し」
前歌の西行の歌に対するかくくゑん阿闍梨の返歌である。あなたはまだ高野の谷深くに澄んで住んでいるものと思って訪ねずにいた間に、菊の下水を掬ぶように、あなたに恨みを結ばせてしまった、と詫びている。
西行の「きくの下水」をそのまま結句に用い、「すむ」に住むと澄む、「むすぶ」に恨みを結ぶと水を掬ぶとを掛けて、水の縁語で巧みに応じている。贈答の機知が互いに響き合う一組である。かくくゑん阿闍梨については、本文の表記に従って記した。
初句「谷深く」は、高野の谷の奥深くに、の意である。
二句「すむかと思ひて」の「すむ」は、「住む」と、水が「澄む」とを掛けた掛詞で、字余りとなっている。
三句「訪はぬ間に」は、訪ねずにいるうちに、の意である。
四句「恨みをむすぶ」の「むすぶ」は、恨みを「結ぶ」意と、水を手で「掬ぶ」意を掛けた掛詞である。
結句「菊の下水」は、前歌の結句を受けた体言止めで、「すむ」「むすぶ」とともに水の縁語を連ねている。
すむ:「住む」と、水が「澄む」を掛ける
むすぶ:恨みを「結ぶ」意と、水を「掬ぶ」意を掛ける
- 作者
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かくくゑん阿闍梨
- 出典
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山家集
- 前の歌
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汲みてなど心通はば訪はざらん 出でたるものをきくの下水
- 次の歌
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思へただ暮れぬと聞きし鐘の音は 都にてだに悲しかりしを