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思へただ暮れぬと聞きし鐘の音は
都にてだに悲しかりしを

歌の意味
ただ思ってもみよ。日が暮れたと告げて聞こえた鐘の音は、都にいてさえ悲しかったのに。まして旅の空ではどれほどか。
鑑賞
雑歌 1081

詞書「旅まかりけるに、入相を聞きて」
 旅の途中で入相の鐘を聞いて詠んだ一首である。日が暮れたことを告げる鐘の音は、都にいたときでさえ悲しく聞こえたのに、ましてこの旅の空で聞く悲しさを思ってもみよ、と詠む。
 都と旅先とを比較し、「だに」によって旅の悲しさがはるかにまさることを暗示している。入相の鐘は本巻の第千五十一首にも詠まれ、山家の夕暮れから旅の夕暮れへと、同じ鐘の音が別の場で響いている。

 初句「思へただ」は、ただ思ってもみよ、の意で、命令形で呼びかける初句切れである。
 二句「暮れぬと聞きし」は、日が暮れたと告げて聞いた、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 三句「鐘の音は」は、夕暮れを告げる入相の鐘の音は、の意である。
 四句「都にてだに」の「だに」は類推の副助詞で、都にいてさえ、の意を表し、まして旅先では、という含みを持たせている。
 結句「悲しかりしを」の「を」は詠嘆を込めた逆接で、悲しかったのに、と言いさして余情を残している。

いりあひ:日の入るころ。ここでは入相の鐘
作者
西行
出典
山家集
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谷深くすむかと思ひて訪はぬ間に 恨みをむすぶ菊の下水
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嵐吹く峰の木の葉に伴ひて いづちうかるる心なるらん