別るとも馴るる思ひや重ねまし
過ぎにし方の今宵なりせば
- 歌の意味
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たとえ別れることになっても、馴れ親しむ思いを重ねていただろうに。もしこの今夜が、過ぎ去った昔のことであったならば。
- 鑑賞
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雑歌 1093
詞書「年頃聞きわたりける人に、初めて対面申して帰りける朝に」
長年うわさに聞き続けてきた人に初めて対面し、帰った翌朝に詠んだ一首である。もし今夜の対面がずっと以前のことであったなら、たとえ別れても、親しみの思いを幾重にも重ねてこられたであろうに、と、出会いの遅さを惜しんでいる。
反実仮想によって、初対面の喜びと、もっと早く会いたかったという悔しさとを同時に表している。長く名を聞いていた人への敬慕と、ようやく得た縁への感慨がこもる一首である。
初句「別るとも」の「とも」は逆接の仮定条件で、たとえ別れても、の意である。
二句「馴るる思ひや」の「や」は疑問の係助詞で、三句の連体形「まし」で結ぶ係り結びとなる。
三句「重ねまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、重ねていたであろうに、の意を表し、三句切れとなる。
四句「過ぎにし方の」は、過ぎ去った昔の、の意である。
結句「今宵なりせば」の「せば」は反実仮想の条件で、今夜が昔のことであったならば、の意を表し、倒置によって仮定を後から示している。
すぎにしかた:過ぎ去った昔
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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定めなし幾年君に馴れ馴れて 別れを今日は思ふなるらん
- 次の歌
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都にも旅なる月の影をこそ 同じ雲居の空に見るらめ