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わたの原波にも月は隠れけり
都の山を何厭ひけん

歌の意味
大海原では波にも月は隠れてしまうのだなあ。都では月を隠す山を、どうしてあれほど嫌ったのだろう。
鑑賞
雑歌 1102

詞書は前の歌に続き「旅の歌よみけるに」
 大海原では、月は波の向こうにも隠れてしまうのだった。それならば都で月を隠す山を、どうしてあれほど恨めしく思ったのだろう、と詠む。
 前歌が海から昇る月を見たのに対し、本歌は海に沈む月を見て、月の入りを妨げるものは山ばかりではなかったと気づいている。都で月を隠す山を恨んだかつての自分を振り返る、軽い自嘲を含んだ一首である。

 初句「わたの原」は、大海原の意で、前歌と同じ初句を用いて対をなしている。
 二句「波にも月は」の「も」は、山だけでなく波にも、の意を表す。
 三句「隠れけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、隠れるのだなあ、と三句切れとなる。
 四句「都の山を」は、都で月の入りを隠していた山を、の意である。
 結句「何厭ひけん」の「けん」は過去推量の助動詞で、どうして嫌ったのだろう、と過去の自分を省みている。

いとふ:嫌う、避ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
わたの原はるかに波を隔て来て 都に出でし月を見るかは
次の歌
山城の美豆の御草につながれて 駒もの憂げに見ゆる旅かな