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慕ふ秋は露もとまらぬ都へと
などて急ぎし舟出なるらん

歌の意味
慕わしい秋は少しもとどまっていない都へと、どうしてあれほど急いだ舟出だったのだろう。
鑑賞
雑歌 1125

詞書「返し」
 前歌に対する加賀の返歌である。慕う秋は露ほども残っていない都へと、どうしてあんなに急いで舟出したのだろう、と、自らの帰京を悔やむように応えている。
 前歌の「いづら都に秋とまるらん」というからかいを受け止め、都に秋は少しもとどまっていなかった、急いで帰ったのが悔やまれる、と素直に認めている。「露も」に、少しもの意と、秋の露とを重ねた返しの妙がある。塩湯からの帰りは舟によったことが知られる。

 初句「慕ふ秋は」は、慕わしく思う秋は、の意で、字余りとなっている。
 二句「露もとまらぬ」の「露も」は、少しも、の意に、前歌の「露置きし」の露を響かせている。
 三句「都へと」は、都へ向かってと、の意である。
 四句「などて急ぎし」の「などて」は、どうして、の意で、急いだことをいぶかっている。
 結句「舟出なるらん」の「らん」は原因推量の助動詞で、どうして急いだ舟出だったのだろう、と結ぶ。

などて:どうして
作者
大宮の女房加賀
出典
山家集
前の歌
露置きし庭の小萩も枯れにけり いづら都に秋とまるらん
次の歌
白河の関屋を月のもる影は 人の心をとむるなりけり