なにとなく都の方を聞く空は
むつましくてぞ眺められける
- 歌の意味
-
なんとなく、都の方の様子に耳を傾けて思いを寄せる空は、親しみを覚えて自然と眺められることだ。
- 鑑賞
-
雑歌 1135
詞書「津の国に山本と申す所にて、人を待ちて日数経ければ」
摂津国の山本という所で人を待って日数が過ぎたときに詠んだ一首である。なんとなく、都の方の便りに耳を傾けて思いを寄せる空は、親しく懐かしく感じられて、自然と眺めてしまう、と詠む。
旅先で人を待つ手持ち無沙汰な日々の中で、都の方角の空に心が引かれる郷愁を素直に表している。都からそれほど遠くない摂津にいてさえ、都を思う心はやまないのである。
初句「なにとなく」は、なんということもなく、の意である。
二句「都の方を」は、都の方角を、都の方の様子を、の意である。
三句「聞く空は」は、その様子に耳を傾けて思いを寄せる空は、の意である。
四句「むつましくてぞ」の「むつまし」は、親しく慕わしい意で、「ぞ」は強意の係助詞として結句の連体形「ける」と係り結びをなす。
結句「眺められける」の「られ」は自発の助動詞で、自然と眺められることだ、の意を表す。
むつまし:親しく慕わしい
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
風荒き柴の庵は常よりも 寝覚めぞものは悲しかりける
- 次の歌
-
水茎の書き流すべき方ぞなき 心のうちは汲みて知らなん