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水茎の書き流すべき方ぞなき
心のうちは汲みて知らなん

歌の意味
筆で書き流して伝える手だてもない。心の内は、どうか汲み取って知ってほしい。
鑑賞
雑歌 1136

詞書「新院讃岐におはしましけるに、便りにつけて女房のもとより」
 保元の乱に敗れて讃岐に配流された新院、崇徳院のもとに仕える女房から、便りに託して西行へ送られてきた一首である。筆で書き流して思いを伝えるすべもない、心の内はどうか汲み取って察してほしい、と訴えている。
 配所での暮らしの悲しみを、言葉にしきれない思いとして表している。「水茎」「書き流す」「汲む」と水の縁語を連ね、あふれる思いを流れる水に重ねている。作者の女房は名が記されていない。以下、讃岐の女房と西行との贈答が続く。

 初句「水茎の」は、筆、筆跡の意で、水の縁語を導いている。
 二句「書き流すべき」は、筆にまかせて書き記すことのできる、の意で、「流す」は水の縁語である。
 三句「方ぞなき」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「なき」で結ぶ係り結びとなり、すべもない、の意を表して三句切れとなる。
 四句「心のうちは」は、心の中の思いは、の意である。
 結句「汲みて知らなん」の「なん」は他者への願望の終助詞で、汲み取って知ってほしい、の意を表し、「汲む」は水の縁語である。

みづくき:筆、筆跡
しんゐん:新たに上皇となった人。ここでは崇徳院
出典
山家集
前の歌
なにとなく都の方を聞く空は むつましくてぞ眺められける
次の歌
程遠み通ふ心のゆくかり なほ書き流せ水茎の跡