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程遠み通ふ心のゆくかり
なほ書き流せ水茎の跡

歌の意味
遠く隔たっているので、通い合う心が行き届くほどに、やはり書き流してほしい、筆の跡を。
鑑賞
雑歌 1137

詞書「返し」
 前歌の讃岐の女房の歌に対する西行の返歌である。遠く隔たっているのだから、通い合う心が行き届くまで、やはり筆の跡を書き流してほしい、と応えている。
 書き流すすべもないという相手に対して、それでも書いてほしい、文字によってこそ遠い心が通うのだから、と励ましている。前歌の「水茎」「書き流す」をそのまま受けて結句に据え、贈答の呼応を明らかにしている。

 初句「程遠み」の「み」は原因を表す接尾語で、遠く隔たっているので、の意である。
 二句「通ふ心の」は、讃岐と都との間に通い合う心の、の意である。
 三句「ゆくかり」は、本文に「ゆくかり」とあり、読み仮名の行には「ゆくはかり」とある。ここでは本文の表記に従うが、「行くばかり」の意、すなわち心が行き届くほどに、の意に解する。
 四句「なほ書き流せ」は、それでもやはり書き流してほしい、の意で、命令形で前歌の「書き流すべき方ぞなき」に応えている。
 結句「水茎の跡」は、筆の跡、手紙の意で、体言止めで前歌の初句を受けている。

みづくきのあと:筆跡、手紙
作者
西行
出典
山家集
前の歌
水茎の書き流すべき方ぞなき 心のうちは汲みて知らなん
次の歌
いとどしく憂きにつけても頼むかな 契りし道のしるべ違ふな