頼むらんしるべもいさや一つ世の
別れにだにも惑ふ心は
- 歌の意味
-
あなたが頼りにしているという道案内も、さあ、どうだろうか。この世での別れにさえ惑う私の心では。
- 鑑賞
-
雑歌 1140
詞書「返し」
第千百三十八首の女房の歌に対する西行の返歌である。あなたが頼りにしているという導き手も、さあどうだろうか、この同じ世の中での別れにさえ思い惑ってしまう私の心では、と応えている。
仏道の導きを託された西行が、この世の別れにさえ心乱れる自分には、その資格があるだろうかと謙遜している。同時に、讃岐と都とに別れている今の悲しみを分かち合う心も込められている。
初句「頼むらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、あなたが頼りにしているという、の意である。
二句「しるべもいさや」の「いさや」は、さあどうだろうか、とためらう意を表す。前歌の「しるべ」を受けている。
三句「一つ世の」は、同じこの世の、の意で、来世との対比を含む。
四句「別れにだにも」の「だに」は類推の副助詞で、この世の別れにさえ、の意を表す。
結句「惑ふ心は」は、思い惑う心では、の意で、倒置によって頼りにならない理由を示している。
いさや:さあどうだろうか
ひとつよ:同じこの世
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
かかりける涙に沈む身の憂さを 君ならで又誰か浮かべん
- 次の歌
-
流れ出づる涙に今日は沈むとも 浮かばん末をなほ思はなん