この春は君に別れの惜しきかな
花の行方を思ひ忘れて
- 歌の意味
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この春は、あなたとの別れが惜しいことよ。いつもは気にかける花の行方も思い忘れて。
- 鑑賞
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雑歌 1143
詞書「同じ折、坪の桜の散りけるを見て、かくなん覚え侍ると申しける」
前歌と同じ折、中庭の桜が散るのを見て、このように思われますと申し上げた一首である。この春は、散る花の行方を案じることも忘れて、あなたとの別ればかりが惜しい、と詠む。
花を愛した西行が、その花の行方を忘れるほどに別れが惜しいと言うことで、前斎宮への別れの情の深さを表している。散る花と別れとを重ね、春の別れの哀感を際立たせている。次の第千百四十四首の六角局の返歌と一組をなす。
初句「この春は」は、今年の春は、の意で、例年と対比している。
二句「君に別れの」は、あなたとの別れが、の意である。
三句「惜しきかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、三句切れとなる。
四句「花の行方を」は、散ってゆく花の行方を、の意で、例年なら案じるはずのものを示す。
結句「思ひ忘れて」は、思うことも忘れて、の意で、倒置によって別れの惜しさの深さを示している。
つぼ:宮中や邸の建物に囲まれた中庭
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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さりともとなほ逢ふことを頼むかな 死出の山路を越えぬ別れは
- 次の歌
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君が去なん形見にすべき桜さへ 名残あらせず風誘ふなり