君が去なん形見にすべき桜さへ
名残あらせず風誘ふなり
- 歌の意味
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あなたが去ってしまう、その形見にしようと思っていた桜までも、名残をとどめさせずに、風が誘って散らしてゆくようだ。
- 鑑賞
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雑歌 1144
詞書「返しせよと承りて、檜扇に書きて差し出でける」
前歌への返歌をせよと命じられて、女房の六角局が檜扇に書いて差し出した一首である。あなたが去った後の形見にしようと思っていた桜までも、名残もとどめず風が誘って散らしてしまうようだ、と応えている。
西行が「花の行方を思ひ忘れて」と詠んだのを受け、去る人も散る花もともに惜しまれる、二重の喪失を詠んでいる。桜を去る人の形見にしようとする発想に、別れを惜しむ心の深さが表れている。
初句「君が去なん」の「なん」は、完了の助動詞「ぬ」の未然形に推量の助動詞「ん」が付いたもので、去ってしまうであろう、の意である。
二句「形見にすべき」は、形見にしようと思う、の意である。
三句「桜さへ」の「さへ」は添加の副助詞で、桜までも、の意を表す。
四句「名残あらせず」は、名残をとどめさせず、の意である。
結句「風誘ふなり」の「なり」は推定の助動詞で、風が誘って散らしてゆくようだ、と音や様子から推し量っている。
かたみ:別れた人や亡き人を思い出すよすがとなる物
ひあふぎ:檜の薄板を綴った扇
- 作者
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六角局
- 出典
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山家集
- 前の歌
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この春は君に別れの惜しきかな 花の行方を思ひ忘れて
- 次の歌
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昔見し松は老い木になりにけり 我が年経たるほども知られて