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思へただ都にてだに袖冴えし
比良の高嶺の雪のけしきを

歌の意味
ただ思ってもみてください。都にいてさえ袖が冷え冷えとした、比良の高嶺の雪の景色を。まして大原ではどれほどか。
鑑賞
雑歌 1156

詞書「返し」
 前歌の西行の歌に対する寂然の返歌である。ただ思ってもみてください、都にいてさえ見ると袖が冷え冷えとした比良の高嶺の雪の景色を、まして近い大原ではどれほどか、と応えている。
 西行の「思ひこそやれ」を受けて「思へただ」と詠み出し、「だに」によって都と大原との寒さの違いを示している。本巻の第千八十一首でも西行が「思へただ」「都にてだに」と詠んでおり、同じ言い回しが友の返歌にも現れている。

 初句「思へただ」は、ただ思ってもみよ、の意で、命令形で呼びかける初句切れである。前歌の「思ひこそやれ」を受けている。
 二句「都にてだに」の「だに」は類推の副助詞で、都にいてさえ、の意を表す。
 三句「袖冴えし」は、袖が冷え冷えとした、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 四句「比良の高嶺の」は、前歌の二句をそのまま受けている。
 結句「雪のけしきを」は、雪の景色を、の意で、倒置によって初句の「思へ」の目的語を示している。

さゆ:冷え込む
作者
寂然
出典
山家集
前の歌
大原は比良の高嶺の近ければ 雪降るほどを思ひこそやれ
次の歌
こととなく君恋ひわたる橋の上に 争ふものは月の影のみ