こととなく君恋ひわたる橋の上に
争ふものは月の影のみ
- 歌の意味
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何かにつけてということもなく、ひたすらあなたを恋い慕いつつ渡る橋の上で、私の思いと競い合うものは月の光ばかりだ。
- 鑑賞
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雑歌 1157
詞書「高野の奥の院の橋の上にて、月明かかりければ、もろともに眺め明かして、その頃西住上人京へ出でにけり、その夜の月忘れがたくて、又同じ橋の月の頃、西住上人のもとへ言ひ遣はしける」
高野山奥の院の橋の上で、月の明るい夜に西住上人とともに夜明けまで月を眺めたことがあった。その後西住は京へ出ていったが、その夜の月が忘れがたく、また同じ橋で月の頃を迎えたとき、西住のもとへ書き送った一首である。ひたすらあなたを恋い慕いつつ渡る橋の上で、私の思いと競い合うのは月の光だけだ、と詠む。
「恋ひわたる」に橋を「渡る」を掛け、友を慕う思いと、橋に照る月の光とが競い合うという表現で、友の不在と月の明るさとを対比している。次の第千百五十八首の西住の返歌と一組をなす。
初句「こととなく」は、特に何かにつけてということもなく、ひたすら、の意に解される。
二句「君恋ひわたる」の「わたる」は、恋い慕い続ける意の「恋ひわたる」と、橋を「渡る」とを掛けた掛詞である。
三句「橋の上に」は、奥の院の御廟橋の上に、の意である。
四句「争ふものは」は、私の思いと競い合うものは、の意である。
結句「月の影のみ」は、月の光ばかりだ、の意で、体言止めで、友なき橋の上に照る月を余韻として残している。
こひわたる:恋い慕い続ける。橋を「渡る」を掛ける
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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思へただ都にてだに袖冴えし 比良の高嶺の雪のけしきを
- 次の歌
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思ひやる心は見えて橋の上に 争ひけりな月の影のみ