鹿の音や心ならねばとまるらん
さらでは野辺をみな見するかな
- 歌の意味
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鹿の鳴く声は、私の思いどおりにはならないので、ここにとどまっているのだろう。それ以外は、野辺のすべてをこうしてお見せすることだ。
- 鑑賞
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雑歌 1159
詞書「忍西入道、吉野山の麓に住みける、秋の花いかに面白かるらんとゆかしう、と申し遣はしたりける返事に、色々の花を折り集めて」
吉野山の麓に住んでいた忍西入道に、秋の野の花はどんなに趣深いことだろう、見てみたい、と書き送ったところ、その返事として、さまざまな花を折り集めて添えてきた歌である。鹿の鳴く声だけは思いどおりにならず送れないのでここにとどまっているが、それ以外は野辺のすべてをこうしてお見せする、と詠む。
秋の野の景物である花と鹿の声とを挙げ、花は折って送れるが、鹿の声は送れないという機知で応えている。野辺の秋を丸ごと届けようとする、心のこもった返事である。次の第千百六十首の西行の返歌と一組をなす。
初句「鹿の音や」の「や」は疑問の係助詞で、三句の連体形「らん」で結ぶ係り結びとなる。
二句「心ならねば」は、自分の思うままにならないので、の意である。
三句「とまるらん」は「や」の結びとして連体形で、ここにとどまっているのだろう、の意を表し、三句切れとなる。
四句「さらでは」は、そうでなければ、それ以外は、の意である。
結句「野辺をみな見するかな」は、野辺のすべてをお見せすることだ、の意で、折り集めた花によって秋の野を届けることを示している。
ゆかし:見たい、知りたい
さらでは:そうでなければ、それ以外は
- 作者
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忍西
- 出典
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山家集
- 前の歌
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思ひやる心は見えて橋の上に 争ひけりな月の影のみ
- 次の歌
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鹿の立つ野辺の錦の切れ端は 残り多かる心地こそすれ