鹿の立つ野辺の錦の切れ端は
残り多かる心地こそすれ
- 歌の意味
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鹿のいる野辺の錦の切れ端のようなこの花々は、まだまだ見残したものが多い心地がすることだ。
- 鑑賞
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雑歌 1160
詞書「返し」
前歌の忍西入道の歌に対する西行の返歌である。鹿のいる野辺の錦の切れ端のようなこの花々を見ると、かえって見残したものが多いように思われる、と応えている。
折り集めた花を、錦のような秋の野を切り取った「切れ端」と見立て、その美しさゆえに、残りの野辺全体を見たい思いがかえって募ることを詠んでいる。花を贈られた感謝とともに、吉野の秋の野への憧れを示している。
初句「鹿の立つ」は、鹿が姿を見せている、の意で、前歌の「鹿の音」を受けている。
二句「野辺の錦の」は、色とりどりの花の咲く野辺を錦に見立てた表現である。
三句「切れ端は」は、錦を切り取った一部分は、の意で、贈られた花を指す。
四句「残り多かる」は、見残したものが多い、の意である。
結句「心地こそすれ」の「こそ」は強意の係助詞で、已然形「すれ」で結ぶ係り結びとなる。
にしき:色とりどりの紋様を織り出した絹織物
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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鹿の音や心ならねばとまるらん さらでは野辺をみな見するかな
- 次の歌
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ひとすぢにいかで杣木の揃ひけん 偽り作る心たくみに