古典和歌stream

我がために辛き心をみなつきの
手づからやがて祓へ捨てなん

歌の意味
私に対するつれない心を、すべて、この水無月の晦日に、あなた自身の手で、そのまま祓い捨ててしまってほしい。
鑑賞
雑歌 1162

詞書「陰陽頭に侍りける者に、ある所の端者もの申しけり、いと思ふやうにもなかりければ、六月晦日に遣はしけるに代はりて」
 陰陽頭であった人に、ある家の召使いの女が思いを寄せたが、相手の態度が思うようにつれなかったので、六月の晦日に贈った歌を、その女に代わって詠んだ一首である。私に対するつれない心を、すべてこの水無月の晦日に、あなた自身の手で、そのまま祓い捨ててしまってほしい、と詠む。
 六月晦日は夏越の祓の日で、罪や穢れを祓い清める行事が行われた。祓を職務とする陰陽頭に向けて、あなたのつれなさも祓い捨てよと訴える、機知に富んだ恋の歌である。

 初句「我がために」は、私に対して、の意である。
 二句「辛き心を」は、つれない、冷たい心を、の意である。
 三句「みなつきの」は、「皆」と「水無月」を掛けた掛詞で、すべてを、の意と、六月の意とを重ねている。
 四句「手づからやがて」の「手づから」は、自分自身の手で、「やがて」は、そのまま、すぐに、の意である。
 結句「祓へ捨てなん」の「なん」は他者への願望の終助詞で、祓い捨ててほしい、の意を表す。本文は「はらへうてなん」とあり、「祓へ棄てなん」の意に解する。

みなつき:「皆」と「水無月」を掛ける
はらふ:神に祈って罪や穢れを除き去る
おんやうのかみ:陰陽寮の長官
作者
西行
出典
山家集
前の歌
ひとすぢにいかで杣木の揃ひけん 偽り作る心たくみに
次の歌
最上川なべて引くらん稲舟の しばしがほどはいかり下ろさん