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最上川なべて引くらん稲舟の
しばしがほどはいかり下ろさん

歌の意味
最上川で皆がそろって引くという稲舟のように、いずれは許そうが、しばらくの間は錨を下ろしておこう、怒りをおさめずにおこう。
鑑賞
雑歌 1163

詞書「ゆかりありける人の、新院の勘当なりけるを、許し給ふべきよし、申し入れたりける御返事に」
 西行の縁者が新院、すなわち崇徳院の勘当を受けていたので、許していただきたいと申し入れたところ、院から下された御返事の歌である。最上川の稲舟は皆が引いて上らせるものだが、しばらくの間は錨を下ろしておこう、と詠む。
 古今和歌集の東歌「最上川上れば下る稲舟のいなにはあらずこの月ばかり」を踏まえ、「稲舟」に「否」を響かせて、拒むわけではないが今しばらくは、という含みを持たせている。さらに「いかり」に船の「碇」と「怒り」とを掛け、怒りをしばらくはおさめない、という意を込めた機知の御製である。次の第千百六十四首の西行の返歌と一組をなす。

 初句「最上川」は出羽国の川で、稲舟とともに詠まれる歌枕である。
 二句「なべて引くらん」は、皆がそろって引くという、の意で、川を上る舟を綱で引くことを表す。
 三句「稲舟の」は、刈り取った稲を運ぶ舟で、本歌の「いなにはあらず」の「否」を響かせている。
 四句「しばしがほどは」は、しばらくの間は、の意で、本歌の「この月ばかり」に通じる。
 結句「いかり下ろさん」の「いかり」は、船を留める「碇」と、「怒り」とを掛けた掛詞で、しばらくは怒りを解かずにおこう、の意を表す。

いなふね:刈り取った稲を積んで運ぶ舟
いかり:船の「碇」と「怒り」を掛ける
かんだう:主君や親から咎めを受けて勘当されること
作者
崇徳院
出典
山家集
前の歌
我がために辛き心をみなつきの 手づからやがて祓へ捨てなん
次の歌
強く引く綱手と見せよ最上川 その稲舟のいかり納めて