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紅の色濃き梅を折る人の
袖には深き香やとまるらん

歌の意味
紅の色の濃い梅を折る人の袖には、色と同じく深い香りがとどまっていることだろうか。
鑑賞
雑歌 1167

詞書「庚申の夜、孔子配りをして歌よみけるに、古今、後撰、拾遺、これを、梅、桜、山吹、に寄せたる題を取りてよみける:古今、梅に寄す」
 庚申の夜、くじ引きをして題を分け、古今、後撰、拾遺の三代集を梅、桜、山吹に寄せた題を取って詠んだ三首のうち、古今を梅に寄せた一首である。紅の色の濃い梅を折る人の袖には、その色と同じように深い香りがとどまっていることだろう、と詠む。
 古今和歌集の「色よりも香こそあはれと思ほゆれ誰が袖ふれし宿の梅ぞも」などに見られる、梅の香が袖に移るという趣向を踏まえている。色の濃さと香の深さとを対応させ、古今集の風雅を梅に託している。

 初句「紅の」は、紅色の、の意である。
 二句「色濃き梅を」は、色の濃い紅梅を、の意である。本文は「むめ」と表記している。
 三句「折る人の」は、枝を折る人の、の意である。
 四句「袖には深き」の「深き」は、色の濃さに対応して、香りの深さを言う。
 結句「香やとまるらん」の「や」は疑問の係助詞で、連体形「らん」で結び、香りがとどまっているだろうか、と推し量っている。

かうしん:庚申の夜。眠らずに夜を明かす風習があった
くじくばり:くじを配って題などを決めること
作者
西行
出典
山家集
前の歌
磯による波に心のあらはれて 寝覚めがちなる苫屋形かな
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春風の吹きおこせむに桜花 隣苦しく主や思はん