古典和歌stream

行く末の名にやながれん常よりも
月澄みわたる白河の水

歌の意味
行く末までその名が流れ伝わるのだろうか。いつにもまして月が澄みわたって映る、白河の水は。
鑑賞
雑歌 1188

詞書「八条院、宮と申しける折、白河殿にて、女房虫合はせられけるに、人に代はりて虫具して、取り出だしける物に、水に月の映りたるよしを作りて、その心をよみける」
 八条院がまだ宮と呼ばれていた頃、白河殿で女房たちが虫合わせを催した。西行は人に代わって虫を出品し、その台に、水に月が映っている趣向の作り物を添えて、その心を詠んだ一首である。いつにもまして月が澄みわたって映る白河の水は、行く末までその名を流し伝えることだろう、と詠む。
 「ながれ」に、水が流れる意と、名声が後世に流れ伝わる意とを掛け、催しの名誉が長く伝わることを祝っている。作り物の水に映る月と、白河殿という場所とを結びつけた、晴れやかな場の歌である。

 初句「行く末の」は、将来の、後々までの、の意である。
 二句「名にやながれん」の「ながれ」は、名が「流れ」伝わる意と、水が「流れ」る意を掛けた掛詞で、「や」は疑問の係助詞として連体形「ん」と係り結びをなし、三句切れとなる。
 三句「常よりも」は、いつにもまして、の意である。
 四句「月澄みわたる」は、月が一面に澄みきって映る、の意である。
 結句「白河の水」は、白河殿の地名と、白く澄んだ川の水とを重ねた体言止めである。

ながる:水が「流れる」意と、名が「流れ」伝わる意を掛ける
むしあはせ:虫を持ち寄って鳴き声や姿の優劣を競う遊び
作者
西行
出典
山家集
前の歌
あはれにぞ深き誓ひの頼もしき 清き流れの底汲まれつつ
次の歌
風立たで波を収むる浦々に 小貝を群れて拾ふなりけり