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波かくる吹上の浜の簾貝
風もぞ下ろす急ぎ拾はん

歌の意味
波がかかる吹上の浜の簾貝よ。風が吹き下ろしてさらっていってしまうといけない、急いで拾おう。
鑑賞
雑歌 1193

詞書は前の歌に続き「内に貝合はせせんとせさせ給ひけるに、人に代はりて」
 波のかかる吹上の浜の簾貝を、風が吹き下ろしてしまうといけないから、急いで拾おう、と詠む。
 「吹上の浜」の名から風を連想し、「簾貝」の名から簾を「下ろす」を連想して、地名と貝の名とをともに生かした機知の歌である。吹上の浜は紀伊国の歌枕で、風の強い浜として知られた。

 初句「波かくる」は、波が打ちかける、の意である。
 二句「吹上の浜の」は、紀伊国の吹上の浜の、の意で、その名から風を連想させる。
 三句「簾貝」は貝の名で、簾を連想させ、「下ろす」の縁語となっている。
 四句「風もぞ下ろす」の「もぞ」は、〜すると困る、という危惧を表し、風が簾を下ろすように吹きさらってしまっては困る、の意である。
 結句「急ぎ拾はん」の「ん」は意志の助動詞で、急いで拾おう、と結ぶ。

すだれがひ:貝の名。簾の連想を持つ
もぞ:〜すると困る、という危惧を表す
作者
西行
出典
山家集
前の歌
波洗ふ衣の浦の神貝を 汀に風のたたみ置くかな
次の歌
潮染むるますほの小貝拾ふとて 色の浜とは言ふにやあるらん