かひありな君が御袖に覆はれて
心にあはぬこともなき世は
- 歌の意味
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生きる甲斐があることだなあ。わが君の御袖に覆われて、心に添わないことも何一つないこの御代は。
- 鑑賞
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雑歌 1197
詞書は前の歌に続き「内に貝合はせせんとせさせ給ひけるに、人に代はりて」
生きる甲斐があることだ、わが君の御袖の恵みに覆われて、心にかなわないことなど何一つないこの御代は、と詠む。
貝合わせの連作の最後に置かれ、「かひ」に「甲斐」と「貝」を、「あはぬ」に、心に合わない意と貝を「合はす」とを掛けて、催しを締めくくっている。君の袖に覆われるという表現で、君の恵みのもとにある泰平の世を寿いでいる。第千百八十九首から続く貝合わせの歌は、穏やかな浦の情景で始まり、泰平の御代への祝意で結ばれている。
初句「かひありな」の「かひ」は、「甲斐」と「貝」を掛けた掛詞で、「な」は詠嘆の終助詞として初句切れとなる。
二句「君が御袖に」は、わが君の御袖に、の意で、君の恩恵を表す。
三句「覆はれて」は、覆われて、守られて、の意である。
四句「心にあはぬ」の「あはぬ」は、心に「合はぬ」意と、貝を「合はす」貝合わせとを掛けた掛詞である。
結句「こともなき世は」は、ことも何一つない御代は、の意で、倒置によって甲斐がある理由を示している。
かひ:「甲斐」と「貝」を掛ける
あふ:心に「合ふ」意と、貝を「合はす」意を掛ける
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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波寄する白良の浜の烏貝 拾ひやすくも思ほゆるかな
- 次の歌
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山深みさこそあらめと聞こえつつ 音あはれなる谷の川水