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山深み窓のつれづれ訪ふものは
色づき初むる櫨の立ち枝

歌の意味
山が深いので、窓辺の所在ない退屈を慰めに訪れてくるものは、色づきはじめた櫨のまっすぐ伸びた枝であることよ。
鑑賞
雑歌 1200

詞書は前の歌に続き「入道寂然、大原に住み侍りけるに、高野より遣はしける」
 十首の連作の三首目である。山が深いので、窓辺の所在ない退屈を慰めに訪れてくるのは、人ではなく、色づきはじめた櫨の立ち枝だけだ、と詠む。
 人の訪れのない山中の庵で、窓から見える櫨の紅葉を訪問者に見立てる擬人化によって、孤独と、そのなかにある小さな慰めとを描いている。寂然の第千二百十六首では、門が木の葉に埋もれて人も訪れない大原の里が詠まれ、訪れる人のない寂しさを分かち合っている。

 初句「山深み」は、山が深いので、の意で、連作に共通する初句である。
 二句「窓のつれづれ」は、窓辺で過ごす所在ない退屈を、の意である。
 三句「訪ふものは」は、訪れてくるものは、の意で、擬人化を導く。
 四句「色づき初むる」は、色づきはじめた、の意である。
 結句「櫨の立ち枝」の「櫨」は紅葉の美しい木で、「立ち枝」はまっすぐ伸びた枝である。体言止めで結ぶ。

つれづれ:することがなく退屈なこと
はじ:櫨。紅葉の美しい木
たちえ:まっすぐ伸びた枝
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山深み槙の葉分くる月影は はげしきものの凄きなりけり
次の歌
山深み苔の筵の上にゐて 何心なく鳴く猿かな