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山深み気近き鳥の音はせで
もの恐ろしき梟の声

歌の意味
山が深いので、親しみやすい鳥の声はせずに、なんとなく恐ろしげな梟の声ばかりが聞こえることよ。
鑑賞
雑歌 1203

詞書は前の歌に続き「入道寂然、大原に住み侍りけるに、高野より遣はしける」
 十首の連作の六首目である。山が深いので、人里で聞くような親しみやすい鳥の声はせず、聞こえてくるのはなんとなく恐ろしげな梟の声ばかりだ、と詠む。
 身近な鳥の声と梟の不気味な声とを対比し、深山の夜の心細さを伝えている。梟は和歌にはあまり詠まれない鳥であり、実際に山中で暮らす者の実感が、新しい素材を取り込ませている。

 初句「山深み」は、山が深いので、の意で、連作に共通する初句である。
 二句「気近き鳥の」の「気近し」は、身近で親しみのある、の意である。
 三句「音はせで」の「で」は打消の接続助詞で、声はせずに、の意である。
 四句「もの恐ろしき」は、なんとなく恐ろしい、の意である。
 結句「梟の声」は体言止めで、深山の夜に響く不気味な声を余韻として残している。

けぢかし:身近である、親しみやすい
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山深み岩に垂るる水溜めん かつがつ落つる橡拾ふほど
次の歌
山深み木暗き峰の梢より ものものしくも渡る嵐か