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山深み馴るる鹿の気近さに
世に遠ざかるほどぞ知らるる

歌の意味
山が深いので、なれ親しんだ鹿がすぐ近くにいることで、世間から遠ざかった程度が自然と知られることだ。
鑑賞
雑歌 1207

詞書は前の歌に続き「入道寂然、大原に住み侍りけるに、高野より遣はしける」
 十首の連作の十首目、最後の一首である。山が深いので、人になれた鹿がすぐ近くまで寄ってくる、その近さによって、自分がどれほど世間から遠ざかったかが自然と知られる、と詠む。
 鹿との近さと世間との遠さを対比させ、遁世の深まりを実感する心で連作を締めくくっている。寂然の連作の最後の第千二百十七首でも「しか」が詠まれており、両者の連作の結びが鹿で呼応している。

 初句「山深み」は、山が深いので、の意で、連作に共通する初句である。
 二句「馴るる鹿の」の「鹿」は、本文に「かせき」とあり、鹿の古称である。人になれた鹿の、の意である。
 三句「気近さに」は、身近にいることによって、の意で、結句の「遠ざかる」と対をなしている。
 四句「世に遠ざかる」は、世間から遠ざかる、の意である。
 結句「ほどぞ知らるる」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「知らるる」で結ぶ係り結びとなり、「るる」は自発の助動詞である。

かせぎ:鹿の古称
けぢかし:身近である
作者
西行
出典
山家集
前の歌
山深み入りて見と見るものはみな あはれもよほすけしきなるかな
次の歌
あはれさは高野と君も思ひやれ 秋暮れ方の大原の里