古典和歌stream

なにとなく露ぞこぼるる秋の田に
引板引き鳴らす大原の里

歌の意味
なんということもなく露がこぼれ落ちる。秋の田で鳴子を引き鳴らす大原の里では。
鑑賞
雑歌 1211

詞書は前の歌に続き「返し」
 寂然の十首の四首目である。なんとはなしに露がこぼれ落ちる、秋の田で鳥を追う鳴子を引き鳴らしている大原の里では、と詠む。
 引板は田の鳥を追い払うために縄で引いて鳴らす板である。引板を鳴らすたびに稲の露がこぼれる情景に、涙を誘われる心を重ね、「露」に涙を響かせている。山里の秋の農村の寂しさがにじむ一首である。

 初句「なにとなく」は、なんということもなく、の意である。
 二句「露ぞこぼるる」の「ぞ」は強意の係助詞で、連体形「こぼるる」で結ぶ係り結びとなる。「露」には涙を響かせている。
 三句「秋の田に」は、秋の田で、の意である。
 四句「引板引き鳴らす」の「引板」は、鳥を追うために縄で引いて鳴らす板で、鳴子のことである。
 結句「大原の里」は体言止めで、連作に共通する結句である。

ひた:鳥を追い払うために縄で引いて鳴らす板、鳴子
作者
寂然
出典
山家集
前の歌
炭竈のたなびく煙ひとすぢに 心細きは大原の里
次の歌
水の音は枕に落つる心地して 寝覚めがちなる大原の里