水の音は枕に落つる心地して
寝覚めがちなる大原の里
- 歌の意味
-
谷川の水の音は、まるで枕もとに落ちてくるような心地がして、とかく夜中に目覚めがちな大原の里であることよ。
- 鑑賞
-
雑歌 1212
詞書は前の歌に続き「返し」
寂然の十首の五首目である。水の音がまるで枕もとに落ちてくるように聞こえて、とかく夜中に目覚めがちになる大原の里だ、と詠む。
水音の近さを「枕に落つる」と表した点が印象的である。西行の第千百九十八首が高野の谷川の水音を詠んだのに応じ、大原の水音を詠んでいる。また本巻の第千百六十六首にも「寝覚めがちなる」の句があり、波の音と水の音とで眠りを妨げられる情景が響き合っている。
初句「水の音は」は、谷川の水の音は、の意で、字余りとなっている。
二句「枕に落つる」は、枕もとに落ちてくる、の意で、水音の近さを表す。
三句「心地して」は、そのような心地がして、の意である。
四句「寝覚めがちなる」は、とかく夜中に目覚めがちな、の意である。
結句「大原の里」は体言止めで、連作に共通する結句である。
ねざめがちなり:とかく夜中に目覚めがちである
- 作者
-
寂然
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
なにとなく露ぞこぼるる秋の田に 引板引き鳴らす大原の里
- 次の歌
-
あだに葺く草の庵のあはれより 袖に露置く大原の里