古典和歌stream

かかる世に影も変はらず澄む月を
見る我が身さへ恨めしきかな

歌の意味
このような世にも、光も変わらずに澄んでいる月を、見ている我が身までもが恨めしいことよ。
鑑賞
雑歌 1227

詞書「世の中に大事出で来て、新院あらぬさまにならせおはしまして、御髪下ろして、仁和寺の北院におはしましけるに参りて、兼賢阿闍梨出であひたり、月明かくてよみける」
 世の中に大事件、すなわち保元の乱が起こり、新院崇徳院が思いもよらない身の上となって出家し、仁和寺の北院におられたところへ西行が参上すると、兼賢阿闍梨が応対に出た。月が明るかったので詠んだ一首である。このような世にも光を変えずに澄んでいる月を、平然と見ている我が身までもが恨めしい、と詠む。
 崇徳院の悲運を前にして、何事もないかのように澄む月と、それを見ている自分とを恨めしく思う心である。月を愛した西行が、その月さえ恨めしいと言うところに、院への深い思いと悲しみとが表れている。以下、崇徳院をめぐる歌が続く。

 初句「かかる世に」は、このような世の中に、の意で、保元の乱後の世を指す。
 二句「影も変はらず」は、月の光も変わらずに、の意である。
 三句「澄む月を」は、澄んでいる月を、の意である。
 四句「見る我が身さへ」の「さへ」は添加の副助詞で、見ている我が身までもが、の意である。
 結句「恨めしきかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、恨めしいことよ、と結ぶ。

しんゐん:新たに上皇となった人。ここでは崇徳院
おほごと:重大な事件。ここでは保元の乱
作者
西行
出典
山家集
前の歌
いつかまたいつきの宮のいつかれて 標の御内に塵を払はん
次の歌
言の葉の情け絶えにし折節に あり逢ふ身こそ悲しかりけれ