世の中を背くたよりやなからまし
憂き折節に君逢はずして
- 歌の意味
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世の中を捨てて出家するきっかけはなかったでしょう。つらい事態にあなたがお遭いにならなかったならば。
- 鑑賞
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雑歌 1230
詞書「讃岐にて、御心ひき替へて、後の世の御勤め隙なくせさせおはしますと聞きて、女房のもとへ申しける、この文を書き具して、若人不嗔打、以何修忍辱」
讃岐で崇徳院がお心を改めて、来世のための勤行を絶え間なくなさっていると聞き、院に仕える女房のもとへ送った一首である。「若し人嗔り打たずば、何を以てか忍辱を修せん」という経文を書き添えている。世を捨てて仏道に入るきっかけはなかったでしょう、つらい事態にお遭いにならなかったならば、と詠む。
添えた経文は、人に怒られ打たれることがなければ、どうして忍辱の行を修めることができようか、という意である。院の配流という不運を、仏道に入るための縁であったと捉え直し、院の勤行を励まし慰めている。以下、崇徳院に奉った歌が続く。
初句「世の中を」は、世の中を、の意である。
二句「背くたよりや」は、捨てて出家するきっかけは、の意で、「や」は疑問の係助詞として三句の連体形「まし」と係り結びをなす。
三句「なからまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、なかったでしょう、の意を表し、三句切れとなる。
四句「憂き折節に」は、つらい事態に、の意で、保元の乱と配流とを指す。
結句「君逢はずして」は、あなたがお遭いにならなかったならば、の意で、倒置によって仮定を示している。
そむく:世を捨てる、出家する
にんにく:侮辱や迫害を耐え忍ぶ修行
- 作者
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西行
- 出典
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山家集
- 前の歌
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敷島や絶えぬる道に泣く泣くも 君とのみこそ跡を偲ばめ
- 次の歌
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あさましやいかなるゆゑの報いにて かかる事しもある世なるらん