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嘆きあまり筆のすさみに尽くせども
思ふばかりは書かれざりけり

歌の意味
嘆きのあまり、筆の慰みにすべて書き尽くそうとしても、思うほどには書くことができなかった。
鑑賞
雑歌 1252

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 嘆きを抑えきれずに、筆に任せて思いを書き尽くそうとしても、心に思うほどには書き表すことができなかった、と詠む。
 恋の思いの深さは言葉では表しきれないということを、恋文を書く行為を通して描いている。書いても書いても思いに届かないもどかしさが表れている。

 初句「嘆きあまり」は、嘆きを抑えきれずに、の意で、字余りとなっている。
 二句「筆のすさみに」は、筆の慰みとして、筆に任せて、の意である。
 三句「尽くせども」は、書き尽くしても、の意である。
 四句「思ふばかりは」は、思うほどには、の意である。
 結句「書かれざりけり」の「れ」は可能の助動詞で、書くことができなかった、と気づきの詠嘆で結ぶ。

すさみ:慰み、気の向くままにすること
作者
西行
出典
山家集
前の歌
みさをなる涙なりせば唐衣 かけても人に知られましやは
次の歌
我が嘆く心のうちの苦しさも 何にたとへて君に知られん