古典和歌stream

心には深くしめども梅の花
折らぬ匂ひはかひなかりけり

歌の意味
心には深く思いを染め、我がものと占めていても、梅の花の、折り取らない香りは甲斐のないものであったよ。
鑑賞
雑歌 1255

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 心には深く思いを染めて、我がものと占めているつもりでも、折り取ることのできない梅の花の香りは、甲斐のないものであった、と詠む。
 恋しい人を梅の花にたとえ、どれほど心に深く思っても、実際に手に入れることのできない恋のむなしさを詠んでいる。「しめ」に「染め」と「占め」とを掛け、香りが染みる意と、自分のものとする意とを重ねている。

 初句「心には」は、心の中では、の意である。
 二句「深くしめども」の「しめ」は、香りが「染め」る意と、自分のものとして「占め」る意を掛けた掛詞である。
 三句「梅の花」は、恋しい人のたとえである。
 四句「折らぬ匂ひは」は、折り取ることのない花の香りは、の意で、思いを遂げられない恋を表す。
 結句「かひなかりけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、甲斐のないものであった、と結ぶ。

しむ:香りが「染む」意と、自分のものとして「占む」意を掛ける
作者
西行
出典
山家集
前の歌
今はただ忍ぶ心ぞつつまれぬ 嘆かば人や思ひ知るとて
次の歌
さりとよとほのかに人を見つれども 覚えぬ夢の心地こそすれ