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さりとよとほのかに人を見つれども
覚えぬ夢の心地こそすれ

歌の意味
あれがあの人だとほのかに見はしたけれども、現実とも思えない夢のような心地がすることだ。
鑑賞
雑歌 1256

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 あれがあの人だと、ほのかに姿を見たのだけれど、現実とも思えず、夢を見ているような心地がする、と詠む。
 長く恋い慕ってきた人の姿をようやく垣間見たときの、信じられないような感動を詠んでいる。はっきりと見たわけではないほのかな姿だからこそ、夢か現かわからない心地が強まっている。

 初句「さりとよと」は、そうだ、あの人だと、の意である。
 二句「ほのかに人を」は、かすかにあの人を、の意である。
 三句「見つれども」は、見たけれども、の意である。
 四句「覚えぬ夢の」は、現実とも思えない夢の、の意である。
 結句「心地こそすれ」の「こそ」は強意の係助詞で、已然形「すれ」で結ぶ係り結びとなる。

ほのかなり:かすかである、ぼんやりしている
作者
西行
出典
山家集
前の歌
心には深くしめども梅の花 折らぬ匂ひはかひなかりけり
次の歌
消えかへり暮れ待つ袖ぞしをれぬる おきつる人は露ならねども