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今はさは覚えぬ夢になし果てて
人に語らでやみねとぞ思ふ

歌の意味
今はもう、それならば、あの逢瀬を現実とも思えない夢にしてしまって、人に語らずに終わってしまえと思う。
鑑賞
雑歌 1260

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 今はもう、あの逢瀬を現実とも思えない夢だったことにしてしまって、誰にも語らずにこのまま終わってしまえと思う、と詠む。
 本巻の第千二百五十六首で夢のようだと感じた逢瀬を、今度は自ら夢だったことにして、秘めたまま終わらせようとする心である。恋の秘密を守ろうとする決意と、諦めの響きとが重なっている。

 初句「今はさは」は、今はもう、それならば、の意である。
 二句「覚えぬ夢に」は、現実とも思えない夢に、の意である。
 三句「なし果てて」は、すっかりしてしまって、の意である。
 四句「人に語らで」の「で」は打消の接続助詞で、人に語らずに、の意である。
 結句「やみねとぞ思ふ」の「やみね」は、終わってしまえ、の意の命令形で、「ぞ」は強意の係助詞として連体形「思ふ」と係り結びをなす。

やむ:終わる、途絶える
作者
西行
出典
山家集
前の歌
さるほどの契りは君にありながら ゆかぬ心の苦しきやなぞ
次の歌
折る人の手にはとまらで梅の花 誰が移り香にならんとすらん