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袖の上の人目知られし折までは
みさをなりける我が涙かな

歌の意味
袖の上の涙が人目に知られてしまった時までは、取り乱さずに落ち着いていた我が涙であったことよ。
鑑賞
雑歌 1272

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 袖の上の涙が人目に知られてしまうその時までは、取り乱すことなく落ち着いていた我が涙であったのに、と詠む。
 一度人に知られてしまうと、もはや涙を抑える必要もなくなり、とめどなく流れるようになったという心を、知られる前の涙の平静さを振り返ることで表している。本巻の第千二百五十一首でも、涙が「みさを」であれば人に知られなかったと詠まれていた。

 初句「袖の上の」は、袖の上の涙の、の意で、字余りとなっている。
 二句「人目知られし」は、人目に知られた、の意で、「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 三句「折までは」は、その時までは、の意である。
 四句「みさをなりける」は、平然として取り乱さなかった、の意である。
 結句「我が涙かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、我が涙であったことよ、と結ぶ。

みさをなり:平然として取り乱さない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
いつかはと答へんことのねたきかな 思ひ知らずと恨み聞かせば
次の歌
あやにくに人目も知らぬ涙かな 堪へぬ心に忍ぶかひなく