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草しげみ沢にぬはれて伏す鴫の
いかによそだつ人の心ぞ

歌の意味
草が茂っているので、沢に縫いとめられたように伏している鴫が飛び立つように、どうしてよそよそしく離れてゆく人の心なのだろう。
鑑賞
雑歌 1275

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 草が茂って沢に縫いとめられたように伏している鴫が、やがて飛び立ってゆくように、どうしてあの人の心はよそよそしく離れてゆくのだろう、と詠む。
 上の句は、鴫が「立つ」ことを導く序詞のような働きをし、「よそだつ」すなわち心が離れてゆくことへと続けている。沢の鴫という秋の景物を借りて、心変わりする相手への嘆きを表している。

 初句「草しげみ」の「み」は原因を表す接尾語で、草が茂っているので、の意である。
 二句「沢にぬはれて」は、沢に縫いとめられたように、の意で、本文のとおり「ぬはれて」とある。
 三句「伏す鴫の」は、身を伏せている鴫の、の意で、鴫が飛び「立つ」ことを導いている。
 四句「いかによそだつ」の「よそだつ」は、よそよそしく離れてゆく意で、鴫が「立つ」ことを響かせている。
 結句「人の心ぞ」の「ぞ」は強意で、あの人の心であることよ、と結ぶ。

しぎ:秋の水辺の鳥
よそだつ:よそよそしくなる、離れてゆく
作者
西行
出典
山家集
前の歌
荻の音は物思ふ我か何なれば こぼるる露の袖に置くらん
次の歌
あはれとて人の心の情けあれな 数ならぬにはよらぬ嘆きを