古典和歌stream

今さらに何かは人も咎むべき
初めて濡るる袂ならねば

歌の意味
今さら、どうして人がとがめたりするだろうか。初めて涙に濡れる袂ではないのだから。
鑑賞
雑歌 1281

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 今さら、どうして人が私の涙をとがめたりするだろうか、初めて涙に濡れる袂ではないのだから、と詠む。
 長く続く恋の涙は、もはや周りの人も見慣れて、とがめることもない、という自嘲を含んだ一首である。涙が日常となってしまった恋の長さと深さとが表れている。

 初句「今さらに」は、今になって、の意である。
 二句「何かは人も」の「かは」は反語で、どうして人が、の意を表す。
 三句「咎むべき」は「かは」と呼応して連体形で、とがめるだろうか、いやとがめはしない、の意を表し、三句切れとなる。
 四句「初めて濡るる」は、初めて濡れる、の意である。
 結句「袂ならねば」は、袂ではないので、の意で、倒置によって理由を示している。

とがむ:問いただす、非難する
作者
西行
出典
山家集
前の歌
つらからん人ゆゑ身をば恨みじと 思ひしことも叶はざりけり
次の歌
わりなしな袖に嘆きの満つままに 命をのみも厭ふ心は