いつとなきおもひは富士の煙にて
うち伏す床やうき島が原
- 歌の意味
-
いつと限りない恋の思いの火は、富士の煙のように絶えず燃え立ち、伏して寝る床は、涙に浮かぶ浮島が原なのだろうか。
- 鑑賞
-
雑歌 1307
詞書は前の歌に続き「恋百十首」
いつという限りもなく燃え続ける恋の思いの火は、富士の山の煙のようで、伏して寝る私の床は、涙に浮かぶ浮島が原なのだろうか、と詠む。
富士の煙と浮島が原は、ともに駿河国の歌枕である。「おもひ」に「火」を掛けて富士の煙と結び、「うき」に「浮き」と「憂き」とを掛けて涙の床とつなげ、燃える思いと流れる涙という、火と水の対比を一首に収めている。
初句「いつとなき」は、いつという限りもない、の意である。
二句「おもひは富士の」の「おもひ」は、「思ひ」と「火」を掛けた掛詞で、富士の煙を導いている。
三句「煙にて」は、煙であって、の意で、恋の思いが絶えず燃え立つさまを表す。
四句「うち伏す床や」は、伏して寝る床は、の意で、「や」は疑問である。
結句「うき島が原」の「うき」は、「浮き」と「憂き」を掛けた掛詞で、駿河国の浮島が原に、涙に浮かぶ憂い多い床を重ねている。
おもひ:「思ひ」と「火」を掛ける
うきしまがはら:駿河国の歌枕。「浮き」と「憂き」を掛ける
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
恨みじと思ふ我さへつらきかな 訪はで過ぎぬる心強さを
- 次の歌
-
これもみな昔のことと言ひながら など物思ふ契りなりけん