- 歌の意味
- 嘆くまいと包み隠していた頃の涙でさえ、思うにまかせて流れる心地がしただろうか、いやしなかった。
- 鑑賞
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雑歌 1312
詞書は前の歌に続き「恋百十首」
嘆くまいと包み隠していた頃の涙でさえ、思いのままに流れるような心地がしただろうか、いやそうではなかった、と詠む。
かつて忍んでいた頃でさえ涙は抑えきれなかったと振り返り、まして今はとめどなく流れることを暗示している。前歌の、流れるにまかせた涙と対比されている。
初句「嘆かじと」の「じ」は打消意志の助動詞で、嘆くまいと、の意である。
二句「包みし頃の」は、包み隠していた頃の、の意である。
三句「涙だに」の「だに」は類推の副助詞で、涙でさえ、の意である。
四句「うちまかせたる」は、思うにまかせた、の意である。
結句「心地やはせし」の「やは」は反語で、心地がしただろうか、いやしなかった、と結ぶ。
うちまかす:成り行きにまかせる
- 作者
- 西行
- 出典
- 山家集
- 前の歌
- 堰きかねてさはとて流す滝つ瀬に 湧く白玉は涙なりけり
- 次の歌
- 今は我恋せん人を訪ふらはん 世に憂きことと思ひ知られぬ