よたけたつ袖にたたへて忍ぶかな
袂の滝に落つる浪を
- 歌の意味
-
丈も高く波立つ袖にいっぱいにたたえて、人目を忍ぶことよ。袂の滝に落ちる波を。
- 鑑賞
-
雑歌 1325
詞書は前の歌に続き「恋百十首」
高く波立つほどの涙を袖にいっぱいにたたえながら、人目を忍んでいることよ、袂を滝のように流れ落ちる涙の波を、と詠む。
あふれる涙を、袖にたたえる水、さらに袂を落ちる滝の波にたとえる誇張によって、忍ぶ恋の涙の多さを表している。初句「よたけたつ」は語義がとりにくいが、丈高く波立つさまと解される。なお本文の結句は「おつる浪を」とあり、読み仮名の行の「おつるなみたを」と一致しない。ここでは本文の表記に従うが、読み仮名の行によれば「落つる涙を」となる。
初句「よたけたつ」は、語義がとりにくいが、丈も高く波立つ、の意に解される。
二句「袖にたたへて」は、袖にいっぱいにたたえて、の意である。
三句「忍ぶかな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、人目を忍ぶことよ、と三句切れとなる。
四句「袂の滝に」は、袂を滝のように流れる涙に、の意である。
結句「落つる浪を」は、本文の表記に従ったもので、落ちる波を、の意である。読み仮名の行によれば「落つる涙を」となり、字数も整う。
たたふ:水などをいっぱいに満たす
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
いつか我塵積む床を払ひあけて 来んと頼めん人を待つべき
- 次の歌
-
憂きによりつひに朽ちぬる我が袖を 心尽くしに何忍びけん