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我ながら疑はれぬる心かな
ゆゑなく袖を絞るべきかは

歌の意味
我ながら疑わしく思われる心であることよ。理由もなく袖を絞るほど泣くはずがあろうか。
鑑賞
雑歌 1339

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 自分のことながら疑わしく思われる心であることよ、理由もなしに、袖を絞るほど泣くはずがあろうか、と詠む。
 恋をしていると自分では認めたくなくても、袖を絞るほどの涙が恋をしていることを証明してしまう、という自問である。自分の心を客観的に見つめる、知的な趣の恋歌である。

 初句「我ながら」は、自分のことながら、の意である。
 二句「疑はれぬる」の「れ」は自発の助動詞で、自然と疑わしく思われた、の意である。
 三句「心かな」の「かな」は詠嘆の終助詞で、三句切れとなる。
 四句「ゆゑなく袖を」は、理由もなく袖を、の意である。
 結句「絞るべきかは」の「かは」は反語で、絞るはずがあろうか、いやない、と結ぶ。

ゆゑ:理由、わけ
作者
西行
出典
山家集
前の歌
包めども袖より外にこぼれ出でて うしろめたきは涙なりけり
次の歌
さることのあるべきかはと忍ばれて 心いつまでみさをなるらん