古典和歌stream

さることのあるべきかはと忍ばれて
心いつまでみさをなるらん

歌の意味
そんなことがあるはずがないと、自然と忍ばれて、この心はいつまで平静を保っていられるのだろう。
鑑賞
雑歌 1340

詞書は前の歌に続き「恋百十首」
 恋などするはずがないと思って、自然と忍んでいられるが、この心はいつまで平静を保っていられるのだろうか、と詠む。
 恋をしている自分を認めまいとして平静を装っているが、それがいつまでもつかと不安に思う心である。前歌の「我ながら疑はれぬる心」と響き合い、恋を否定しようとする心の危うさを詠んでいる。

 初句「さることの」は、そのようなことが、の意で、恋をすることを指す。
 二句「あるべきかはと」の「かは」は反語で、あるはずがあろうかと、の意である。
 三句「忍ばれて」の「れ」は自発の助動詞で、自然と忍ばれて、の意である。
 四句「心いつまで」は、この心はいつまで、の意である。
 結句「みさをなるらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、平静でいられるだろうか、と結ぶ。

みさをなり:平然として取り乱さない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
我ながら疑はれぬる心かな ゆゑなく袖を絞るべきかは
次の歌
取り残し思ひもかけぬ露払ひ あなくらたかの我が心や