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松山の波のけしきは変はらじを
形なく君はなりましにけり

歌の意味
松山の波の様子は昔と変わらないだろうに、院は跡形もなくおなりになってしまったことよ。
鑑賞
雑歌 1354

詞書は前の歌に続き「讃岐に詣でて、松山の津と申す所に、院おはしましけん御跡尋ねけれど、形もなかりければ」
 前歌と同じ松山の津で詠んだ一首である。松山の波の様子は昔と変わらないだろうに、院は跡形もなくおなりになってしまった、と詠む。
 変わらない自然と、跡形もなく消えた院とを対比し、人の世の無常を嘆いている。詞書の「形もなかりければ」を受けて「形なく」と詠み、院の崩御とその御跡の消失とを重ねている。

 初句「松山の」は、讃岐国の松山の、の意で、前歌と同じ初句である。
 二句「波のけしきは」は、波の様子は、の意である。
 三句「変はらじを」の「じ」は打消推量、「を」は逆接で、変わらないだろうに、の意である。
 四句「形なく君は」は、跡形もなく院は、の意で、詞書の「形もなかりければ」を受けている。
 結句「なりましにけり」の「まし」は尊敬の補助動詞で、おなりになってしまった、と結ぶ。

かたなし:跡形もない
作者
西行
出典
山家集
前の歌
松山の波に流れて来し舟の やがてむなしくなりにけるかな
次の歌
よしや君昔の玉の床とても かからん後は何にかはせん