今よりは厭はじ命あればこそ
かかる住まひのあはれをも知れ
- 歌の意味
-
これからは命を厭うまい。命があればこそ、このような住まいのしみじみとした趣も知ることができるのだから。
- 鑑賞
-
雑歌 1357
詞書「住みけるままに、庵いとあはれに覚えて」
讃岐の山の庵に住み続けるうちに、庵の暮らしがたいそう心にしみて感じられたので詠んだ一首である。これからは命を厭うまい、命があればこそ、このような住まいのしみじみとした趣も知ることができるのだから、と詠む。
長らえることを厭う遁世者が、庵の暮らしの哀れ深さに触れて、命のありがたさを改めて感じている。前歌の月の美しさを受け、生きていればこそ出会える感動を肯定している。
初句「今よりは」は、これから先は、の意である。
二句「厭はじ命」の「じ」は打消意志の助動詞で、命を厭うまい、の意を表し、二句切れとなる。
三句「あればこそ」の「こそ」は強意の係助詞で、結句の已然形「知れ」と係り結びをなす。
四句「かかる住まひの」は、このような住まいの、の意である。
結句「あはれをも知れ」は、しみじみとした趣も知る、の意である。
いとふ:嫌う、厭わしく思う
- 作者
-
西行
- 出典
-
山家集
- 前の歌
-
曇りなき山にて海の月見れば 島ぞ氷の絶え間なりける
- 次の歌
-
久に経て我が後の世を訪へよ松 跡偲ぶべき人もなき身ぞ