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久に経て我が後の世を訪へよ松
跡偲ぶべき人もなき身ぞ

歌の意味
長い年月を経て、私の死後を弔ってくれ、松よ。跡を偲んでくれるはずの人もいない身なのだから。
鑑賞
雑歌 1358

詞書「庵の前に、松の立てりけるを見て」
 讃岐の庵の前に松が立っているのを見て詠んだ一首である。長い年月を経て、私の死後の世を弔ってくれ、松よ、私には跡を偲んでくれるはずの人もいない身なのだから、と松に呼びかけている。
 遠い異郷の地で、ともに暮らす松を唯一の友とし、その長寿に自らの死後の弔いを託している。孤独な遁世者の心と、松への親愛とが表れた一首である。次歌もこの松を詠んでいる。

 初句「久に経て」は、長い年月を経て、の意である。
 二句「我が後の世を」は、私の死後の世を、の意である。
 三句「訪へよ松」の「訪ふ」は弔う意で、松に命令形で呼びかける三句切れである。
 四句「跡偲ぶべき」は、死後を偲んでくれるはずの、の意である。
 結句「人もなき身ぞ」の「ぞ」は強意で、人もいない身なのだ、と倒置によって呼びかけの理由を示している。

のちのよ:死後の世
とふ:弔う、死後を祈る
作者
西行
出典
山家集
前の歌
今よりは厭はじ命あればこそ かかる住まひのあはれをも知れ
次の歌
ここをまた我住み憂くて浮かれなば 松はひとりにならんとすらん