古典和歌stream

谷の庵に玉の簾をかけましや
すがるたるひの軒を閉ぢずは

歌の意味
谷の庵に、玉の簾を掛けることなどあっただろうか。もし、垂れ下がるつららが軒を閉ざさなかったならば。
鑑賞
雑歌 1366

詞書は前の歌に続き「雪の降りけるに」
 谷の粗末な庵に、玉の簾を掛けることなどあっただろうか、もし垂れ下がるつららが軒を閉ざしていなかったならば、と詠む。
 軒から垂れ下がる氷柱を、玉で飾った美しい簾に見立てている。粗末な庵には本来似つかわしくない玉の簾が、冬の自然によって掛けられたという、遁世の住まいの思わぬ美しさを詠んでいる。

 初句「谷の庵に」は、谷あいの庵に、の意で、字余りとなっている。
 二句「玉の簾を」は、玉で飾った美しい簾を、の意である。
 三句「かけましや」の「まし」は反実仮想、「や」は反語で、掛けることがあっただろうか、いやない、の意を表し、三句切れとなる。
 四句「すがるたるひの」の「たるひ」は、つらら、氷柱の意で、「すがる」は垂れ下がる意に解される。
 結句「軒を閉ぢずは」の「ずは」は打消の仮定で、軒を閉ざさなかったならば、の意を表し、倒置によって仮定を示している。

たるひ:つらら、氷柱
作者
西行
出典
山家集
前の歌
中々に谷の細道埋め雪 ありとて人の通ふべきかは
次の歌
樒置く閼伽の折敷の縁なくは 何に霰の玉と散らまし